がん検診と市町村の役割

市町村や特別区が発行している地域住民向けの広報誌をみると、毎年かならず、さまざまな身体の部位のがんを対象としたがん検診のお知らせが掲載されています。実はわが国には「健康増進法」とよばれる法律があり、そのなかでの市町村の役割として、健康増進事業を行うことが規定されています。定期的に行われているがん検診というのは、この健康増進事業のなかの一環ということになります。しかし、すべての市町村が自己の裁量だけでばらばらにこうした事業を行うというのでは効率的ではなく、ときに実施しても医学的に意味のないような不必要な検査まで採用されてしまうおそれがあります。

こうしたことから、厚生労働省では科学的に死亡率減少などの効果が裏付けられている方法や種類などをあらかじめ指針として市町村に示して、市町村ではこの指針にもとづいて運営をするようにしています。わが国のがん検診の受診率は、全体を均してみると3割程度にとどまっており、とくに女性の子宮頚がんや乳がんなどでの受診率は2割台と低いことが指摘されています。このため、国の厚生労働省や市町村では、さらにがん検診の普及促進の必要性があると認識しており、現在では特定の年齢に達した住民に個別に案内をするとともに、無料クーポン券を配布するなどの取組みを行っています。これらの取組みによって、当面はがん検診の国民の受診率を50パーセントまで引き上げたいという目標を掲げています。